大判例

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大阪地方裁判所 平成4年(わ)3775号 判決 1993年5月21日

本店所在地

大阪府藤井寺市沢田二丁目九番三六号

大黒住宅株式会社

右代表者代表取締役

堀内和彦

本籍

大阪府羽曳野市大黒三七三番地

住居

同府同市古市五丁目一〇番一八号

会社役員

堀内和彦

昭和一八年七月三日生

右の者らに対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官田中素子出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人大黒住宅株式会社を罰金五〇〇〇万円に、被告人堀内和彦を懲役二年にそれぞれ処する。

被告人堀内和彦に対し、この裁判の確定した日から三年間その刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人大黒住宅株式会社(以下、「被告会社」という)は、大阪府藤井寺市沢田二丁目九番三六号に本店事務所を置き、土地建物売買及び仲介等を目的とする資本金二〇〇万円の株式会社であり、被告人堀内和彦(以下、「被告人」という)は、被告会社の代表取締役として、その業務全般を統括していた者であるが、被告人は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと考え、

第一  別紙修正損益計算書(一)記載のとおり、昭和六一年一〇月一日から昭和六二年九月三〇日までの事業年度における実際の所得金額が五六九〇万五一二二円で、課税土地譲渡利益金額が一二〇三万三〇〇〇円であったのに、外注費を水増計上するなどの行為により、その所得の一部を秘匿したうえ、昭和六二年一一月二七日、大阪府富田林市若松町西二丁目一六九七番地の一所在の所轄富田林税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が三二六二万三七六九円で、課税土地譲渡金額がなく、これに対する法人税額が一二五一万一七〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、別紙税額計算書記載のとおり、被告会社の右事業年度の正規の法人税額二五一一万六七〇〇円と右申告税額との差額一二六〇万五〇〇〇万円を免れ、

第二  別紙修正損益計算書(二)記載のとおり、昭和六二年一〇月一日から昭和六三年九月三〇日までの事業年度における実際の所得金額が二億一九四三万二七三八円で、課税土地譲渡利益金額が一億七五〇八万円であったのに、前同様の不正の行為により、その所得の一部を秘匿したうえ、昭和六三年一一月二八日、前記所轄富田林税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が五四八四万七二八五円で、課税土地譲渡利益金額がなく、これに対する法人税額が二一九一万四七〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、別紙税額計算書記載のとおり、被告会社の右事業年度の正規の法人税額一億四三五六万四四〇〇円と右申告税額との差額一億二一六四万九七〇〇円を免れ、

第三  別紙修正損益計算書(三)記載のとおり、昭和六三年一〇月一日から平成元年九月三〇日までの事業年度における実際の所得金額が一億五三八〇万五一二五円で、課税土地譲渡利益金額が一億五七〇九万八〇〇〇円であったのに、前同様の不正の行為により、その所得の一部を秘匿したうえ、平成元年一一月二九日、前記所轄富田林税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が三〇〇〇万円で、課税土地譲渡利益金額がなく、これに対する法人税額が一一六四万円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、別紙税額計算書記載のとおり、被告会社の右事業年度の正規の法人税額一億一〇七六万七五〇〇円と右申告税額との差額九九一二万七五〇〇円を免れた。

(証拠の標目)

注・証拠末尾の括弧内の漢数字は、証拠等関係カード(請求書等検察官)の証拠請求番号を示している。

判示事実の全部について

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の

(1)  検察官に対する平成四年六月二四日付(八〇)及び同年九月一一日付(八一)各供述調書

(2)  大蔵事務官に対する平成三年四月一日付(五二)、同年五月二八日付(五四)、同年六月一〇日付(五五)、同年七月二日付(五六)、同月九日付(記録第二一-一九号)(五七)、同月一六日付(五九)、同年八月二三日付(二通)(六一、六二)、同月三〇日付(六三)、同年九月一七日付(六四)、同年一一月一八日付(六五)、同月一九日付(記録第二一-二九号)(六六)、同月三〇日付(七〇)、同年一二月六日付(二通)(七一、七二)、同月七日付(七三)、同月一〇日付(七四)、同月一一日付(二通)(七五、七六)、同月一二日付(七七)、同月二〇日付(七八)及び同月二五日付(七九)各質問てん末書

一  仲井弘之の検察官に対する供述調書(四三)

一  仲井紀子の検察官に対する供述調書二通(四四、四五)

一  辰巳剛の大蔵事務官に対する質問てん末書(四九)

一  大蔵事務官作成の査察官調査書一一通(記録第二六-一号(一三)、記録第二六-八六号(一七)、記録第二六-八七号(一八)、記録第二六-八八号(一九)、記録第二六-五三号(二〇)、記録第二六-九〇号(二一)、記録第二六-九一号(二二)、記録第二六-八号(二四)、記録第二六-五九号(三二)、記録第二六-六〇号(三五)、記録第二六-五四号(四一))

一  登記官中村壽男認証の登記簿謄本五通(但し、うち四通は閉鎖役員欄用紙謄本)(八三ないし八七)

一  被告会社作成の証明書(八八)

一  検察事務官作成の捜査報告書(一一)

一  大蔵事務官作成の証明書(青色申告書提出の承認取消についてのもの)(一二)

判示第一及び第二の各事実について

一  被告人の大蔵事務官に対する平成三年七月九日付質問てん末書(記録第二一-二〇号)(五八)

一  大蔵事務官作成の査察官調査書(記録第二六-一四号)(三一)

判示第一及び第三の各事実について

一  大蔵事務官作成の査察官調査書(記録第二六-六号)(三三)

判示第一の事実について

一  大蔵事務官作成の査察官調査書(記録第二六-一二号)(二八)

一  大蔵事務官作成の証明書二通(いずれも昭和六一年一〇月一日から昭和六二年九月三〇日までの事業年度分の申告書写についてのもの)(四、五)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(期間が昭和六一年一〇月一日から昭和六二年九月三〇日までのもの)(一)

判示第二及び第三の各事実について

一  被告人の大蔵事務官に対する平成三年一一月二二日付(六八)及び同月二五日付(六九)各質問てん末書

一  川邉京子の検察官に対する供述調書(四六)

一  池西勇夫の検察官に対する供述調書二通(四七、四八)

一  大蔵事務官作成の査察官調査書四通(記録第二六-九号(二五)、記録第二六-一〇号(二六)、記録第二六-一一号(二七)、記録第二六-六八号(三七))

判示第二の事実について

一  被告人の大蔵事務官に対する平成三年五月一〇日付(五三)及び同年七月三〇日付(六〇)各質問てん末書

一  半田能武夫の検察官に対する供述調書(四二)

一  大蔵事務官作成の査察官調査書二通(記録第二六-三号(一五)、記録第二六-六三号(三三))

一  大蔵事務官作成の証明書二通(いずれも昭和六二年一〇月一日から昭和六三年九月三〇日までの事業年度分の申告書写についてのもの)(六、七)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(期間が昭和六二年一〇月一日から昭和六三年九月三〇日までのもの)(二)

判示第三の事実について

一  被告人の

(1)  検察官に対する平成四年九月一六日付供述調書(八二)

(2)  大蔵事務官に対する平成三年一一月一九日付質問てん末書(記録第二一-三〇号(六七)

一  大蔵事務官作成の査察官調査書九通(記録第二六-二号(一四)、記録第二六-四号(一六)、記録第二六-一三号(二九)、記録第二六-二一号(三〇)、記録第二六-六二号(三四)、記録第二六-五八号(三六)、記録第二六-一四号(三八)、記録第二六-六九号(三九)、記録第二六-一四八号(四〇))

一  大蔵事務官作成の証明書三通(いずれも昭和六三年一〇月一日から平成元年九月三〇日までの事業年度分の申告書写についてのもの)(八、九、一〇)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(期間が昭和六三年一〇月一日から平成元年九月三〇日までのもの)(三)

(法令の適用)

罰条 被告会社

判示各罪についていずれも法人税法一六四条一項、一五九条一項、二項(いずれも情状により、罰金はその免れた法人税額に相当する金額以下)

被告人

判示各罪についていずれも法人税法一五九条一項

刑種の選択 被告人の判示各罪についていずれも所定刑中懲役刑を選択

併合罪の処理 被告会社

刑法四五条前段、四八条二項(判示各罪の罰金額を合算)

被告人

刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の最も重い判示第二の罪の刑に法定の加重)

主刑 被告会社を罰金五〇〇〇万円、被告人を懲役二年

刑の執行猶予 刑法二五条一項(被告人に対し三年間猶予)

(量刑の理由)

本件は、土地建物の売買、仲介等を営業目的とする被告会社の設立当初からの代表取締役で、業務全般を統括していた被告人において、被告会社の昭和六一年一〇月から平成元年九月までの三事業年度に合計四億三〇一四万円余の所得があり、かつ、三億四四二一万余の課税土地譲渡利益がありながら、うち六億五六八八万円余の所得及び課税土地譲渡利益を秘匿して過少申告し、法人税合計二億三三三八万円余を脱税した犯行で、脱税額も少なくなく、ほ脱率も約八三・五パーセントと相当高率の事案である。そして、脱税の動機は、不動産取引から生じるいわゆる裏金の捻出のためであったとはするものの、結局は、「できるだけ税金を少なく納めるようにして、自分の財産を増やしたいと思ったから」というもので、とくに酌むべき点はなく、また、請け負った建物建築代金や売却した土地代金の売上の一部を除外したり、取引先に請け負わせた建売住宅建築工事代金について、水増しした金額での領収書を発行させるなどの所得の秘匿方法も悪質なものであり、被告人及び被告会社の刑責は軽くない。

しかし、他方、被告人は、本件の摘発後、査察調査段階から事実関係を認め、また、贖罪の意も込めて、羽曳野市社会福祉協議会に二〇〇万円の寄付をするなど、現在十分に反省していると認められること、被告会社においては、本件ほ脱にかかる法人税本税、重加算税、延滞税のすべての納付を既に終え、現在、顧問税理士事務所による経理チェック体制も強化したほか、支払関係を振込や小切手で行なうなど、経理体制を改め、適正な申告に努めていること、さらに、被告人にはこれまで交通事犯による罰金前科があるのみであることなど、しん酌すべき事情もある。

そこで、これら諸般の事情を総合考慮し、被告会社及び被告人をそれぞれ主文掲記の刑に処したうえ、被告人に対してはその刑の執行を猶予することにした。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 竹田隆)

修正損益計算書(一)

<省略>

修正損益計算書(土地譲渡にかかる譲渡利益金額計算書)(一)

<省略>

修正損益計算書(二)

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修正損益計算書(土地譲渡にかかる譲渡利益金額計算書)(二)

<省略>

修正損益計算書(三)

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修正損益計算書(土地譲渡にかかる譲渡利益金額計算書)(三)

<省略>

税額計算書

<省略>

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